第6章 年中行事

 

※1月から12月にかけ、順に聞いていくのが基本的な方法となる。ただし年始の行事は既に年末から始まっているため、実際には12月下旬が始点となることには注意すること。また、調査時点(たとえば8月の調査であれば8月のその日)を始点にして、「これから何がありますか」的に話者の記憶を引き出していく方法もある。

※年中行事には世帯を単位として実施されるものと、同族団や講組組織を単位としたもの、村落全体で実施されるものなどがある。項目上ではいちいち言及していないが、誰によって行われているのかは丁寧に見ていくこと。また特にウマチーは神役経験者でないと、中身が分からない恐れが強い。良い話者を探すこと

※「旧暦か新暦か」「新暦に切り替わったのはいつか」を一つ一つ確認していくこと。

※ここでは沖縄本島の年中行事として広く見られるものを基準に立項している。日取りや行事の内容には地域性が反映されてくるため、ここに挙げたものに必ずしもとらわれるべきではない。

※本項目票では、信仰に関わる民俗を、組織や祭祀対象など共時的なものについては「第5章 信仰と祭祀」で扱い、儀礼の流れや進め方など通時的なものについては本章で扱うという構成をとっている。このためここでは行事の時間的経過を意識し、何がいつ、どのように行われているのか、その展開を丁寧に記述することが望ましい。

 

1月の行事

※正月は盆と並んで行事の密度が濃い。混乱をきたしやすいので丁寧に確認していくこと

 

元旦

*正月のことを地元の言葉で何と言うか(ソーガチなど)

*初日の出を拝む習慣はあるか

 >ある場合、昔からの習慣か新しいものか

 >昔から行っている場合、行事名を地元の言葉で何と言うか(ティダウガミなど)

 >日の出を見に行く場所はどこか

*正月の期間はいつからいつまでの間か

*正月の期間中、やってはいけないと言われていたことは何かあるか。またその理由は何か

 >仕事始めの前に山に入ってはいけない、など

 

若水汲み

*若水汲みの習慣を地元の言葉で何と言うか(ワカミジムケーなど)

*若水汲みはいつ、誰が、どの水場に行き、何(桶・ヤカンなど)で汲んでくるものだったか

 >大人(家長・主婦)か子供か。子供の場合、汲んできた子にお年玉をあげる習慣はあったか

 >若水を汲むのに「よい」とされた水場などはあったか

*汲んできた水で何をしたか

 >水を神に供える、沸かして茶を入れる、顔を洗うなど

 

年頭御願

*正月の朝の年頭に行う御願を何と言うか

*年頭の御願ではどの神様に祈願するか。また何を供えるか

 >塩・水・酒・米・線香・豚肉など

*年頭の御願では誰が、どのような祈願を行ったか

*火の神が天から降りてくるのは何日だと聞いているか。またそのための行事はあるか

*正月にはどのようなものを食べるか(いわゆる正月料理)

 ※12月の行事にも立項しているので、ここでは聞かなくともよい

 

年始参り・お年玉

*年始に近隣や親戚を訪ねる習慣を何と言うか

*年始参りではどのような家を訪ねるか

 >特に本家や総本家(ムートゥヤー)を訪ねて先祖に挨拶する習慣はあったか

*お年玉を子供に与える習慣はあったか

 >現金以外のものをあげる例はあったか

*遠方にいる親戚と電話などで挨拶しあうことは行っていたか

 

初拝み(ハチウガミ)

*年始に集落の拝所などに参拝する習慣はあったか

 >あった場合何日(1日、2日、3日)に行い、どこに参拝していたか

 >行事の名前を何と言ったか

*世帯で行うものであったか、それとも集落全体で行っていたか

*ノロや神役が御願を行うことはあったか

 >神役もしくは神役の親族のみで行われる例もあるので注意すること

*初拝みではどのような供物が捧げられたか

*初拝みに際して、願立て(何かの願いを立てること)を行う習慣があったか

 >行う場合はどのようなことが祈願されていたか

 

初井泉御願(ハチウビー)

※神役でないと分からないかもしれない

*正月の期間中に井戸や泉のための御願を行う習慣はあったか

>行っていた場合、行事の名前は何と言ったか

*その御願は誰が、どこで、どのようなことをしたか

 >本家やウタキで行う場合は、その場所についても確認する

 >複数の泉(カー)を回る際は、カーの場所、名前、回る順番も確認する

*御願の際にはどのような供物を用意し、どのように供えるか

仕事始め(ハチウクシー)

*仕事始めの儀礼を行う習慣はあるか

 >正月の間に田畑に行き、簡単に土を起こしたり草刈りをしたりするなど

 >行っている場合、儀礼のことを地元の言葉で何と言うか

 >具体的にどのようなことをするのか

 >日取りはいつか

*正月前に農具につけておいた飾りを外すのはいつか。またその際、何か儀礼はするか

*農家以外の仕事でも、仕事始めの儀礼は行っているか

 >大工、漁師の場合は海開き、山仕事の場合は山開きの儀礼が行われる場合がある

 

三日節供(ミッチャヌスク)

*正月三日に何かの儀礼や、特別な食事をとることはあるか

 >行う場合、その儀礼を地元の言葉で何と言うか

*具体的にどのようなことを行うか

 >天ぷらなどを火の神などに供える、ジューシー(雑炊)を仏壇に供える、など

 

七日節供(ナンカヌスク)

*正月七日に何かの儀礼や、特別な食事をとることはあるか

 >行う場合、その儀礼を地元の言葉で何と言うか

*具体的にどのようなことを行うか

*正月の飾りを片づけるのはこの日か

*1月7日の早朝などに、豊作祈願の御願をする習慣はあるか

 >ある場合、どこの拝所でどのような御願を行っているか

 

正月十六日(ジュールクニチー)

*正月十六日に何かの儀礼や、特別な食事をとることはあるか

 >行う場合、その儀礼を地元の言葉で何と言うか

*具体的にどのようなことを行うか

 >一般には「祖先の正月」とされ、墓の掃除や仏壇への供え物が行われる

 >どのようなものが供えられるか(花・茶・線香など)

*昨年に死者を出したばかりの家では、この日の行事のやり方を変えることはあったか

 

正月二十日(ハチカソーグヮチ)

*正月二十日に何かの儀礼や、特別な食事をとることはあるか

 >行う場合、その儀礼を地元の言葉で何と言うか

*具体的にどのようなことを行うか

 >一般に正月最後の行事であり、先祖への供え物のほか、同じくらいの年齢の者が集まって楽しむ例が各地に見受けられる

*この日にはどのようなものを食べたか

 

年日祝い(トゥシビーユーエー)

※人生儀礼の方でも立項している

*正月に年祝いをする習慣はあったか。またその習慣を地元の言葉で何と言うか

*年祝いの日程はどのように決めたか

 >多い例は、生まれ年と同じ干支の日(酉年生まれなら酉の日)に行うケース

*どのようなことを行ったか

*年祝いの際に特に食べたものはあったか

*前年年祝いに当たっていた者が、「晴厄(ハリヤク)」の祈願を行う習慣はあったか

 

成人式

※伝統的な年中行事ではないが、年祝いとの重なりもあるため、あわせて聞き取ること

*今のような自治体の成人式が行われるようになったのは何年からか

*自治体の成人式にはどのような変化があったか

*自治体の成人式は誰がどのように仕切って進めているか

*伝統的な年祝いや正月二〇日の習慣と一体化した例はあるか

 

2月の行事

ニングヮチャー、腰憩い(クシユッキー・クシユックイ)

※2月の行事だが地域差が著しく、男性集団が中心になる例も見られる。特にその場合には、他の祭祀とは祭祀組織が異なってくることになるので、組織についても確認していくこと。また後述のシマクサラシー儀礼と一体となっている例もあるので注意すること。

*2月の田植え終わり・製糖終わりの時期に、慰労を兼ねて祭祀を行う習慣はあるか

*その祭祀のことを地元の言葉で何と言うか

*祭祀の日程はどのようなもので、いつからいつまで行われるか

*その祭祀は誰がどのようなことをするか

 >ノロや神役は何をするか。また、青年団は何をするか

 >どこの拝所や井泉が祭祀対象となるか

*この日に特に食べるものなどはあるか

 

シマクサラシー

※集落の境界などで豚や牛が畜殺される供犠儀礼である。場所と儀礼の進め方が重要なので注意すること。また前掲したニングヮチャー・クシユッキーと同じ日に行われる例もあるので、その場合はあわせて調査すること。

※シマクサラシー儀礼は沖縄に広く分布が見られるが、1月のほか8月などに行われる例も珍しくない。自分の調査地がどうであるのか確認すること

*2月に豚や牛を畜殺する祭祀は行われていたか

 >行われていた場合、地元の言葉で何と呼んでいたか

 >殺していたのは何か(牛・豚・そのほか)、またオス・メスに決まりはあったか

*祭祀の日程はいつであったか

*畜殺は誰が、どこで行っていたか

 >通常の畜殺に用いた場所と同一か、それとも異なっていたか

*殺された動物をその後どうしたか

 >一般には、肩の骨・足の骨などを縄で縛って集落のはずれに吊るす例が多い。

  >何をどこに、どのように吊るしたのかを確認する

 >同時に動物の血を「トベラ木」の枝葉につけ、門や三叉路に挿す習慣も多い

*動物の肉をどのように食べたか

 >どのような料理にしたか

 >誰にどのように配分されたか

 >肉を仏壇や神棚などに供える習慣はあったか

*この儀礼は現在でも行われているか

 >なくなっている場合、いつごろ、どのような理由で消えたのかを調べる

 

土帝君祭(トーテークン)

*土帝君(トーテークン)は集落にあるか。あるのならばそれはどこか。

 >ない場合はそれ以上聞かなくてよい。

*土帝君の祭祀はいつ行われるか

 >2月に祭祀があるとは限らないため注意。また、宗教者によって日取りが移されているケースが多いので、過去も現在と同様の日取りであったのかについても注意する

 >年に複数回祭祀を行う例もある。その場合、同じ祭祀をするのか、それとも祭式が変わるのかについても注意する

*土帝君の祭祀は誰がどのように執り行うか

 >祭祀集団の構成について確認する

*土帝君の祭祀ではどのようなものが供えられるのか

 

二月ウマチー

※神役の経験者でないと分からないおそれが強い。祭祀の中身が分かりそうな話者をよく探すこと。

*2月15日に前後してウマチーを行う習慣があったか

 >あった場合、それを地元の言葉で何と呼んでいたか

*2月のウマチーは何の祈願であったと聞いているか

 >一般には麦の初穂儀礼とされるが、伝承されていない例も多い

*2月のウマチーではどのような祭祀が行われたか

 >「いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのか」を押さえる

 >何が祭祀対象であったか

 >それぞれの祭祀対象にどのような祭祀を行ったか(多数に渡ることが多いので注意)

 >どのような供物が捧げられたか(それぞれの祭祀対象に即して聞く)

*2月のウマチーを行ったのは誰か

 >一般には神役組織。ノロやニーガンなどがどのような祭祀を行ったのかを聞く

 >祭場によって異なる場合もあるので注意

 >ノロにどのような謝礼をしたのかも聞く

*ウマチーの間、「やってはいけない」と言われていたことは何かあるか

 

春彼岸

*彼岸行事を地元の言葉で何と言うか

*春の彼岸ではどのような行事を行うか

*先祖への供物はどのようなものを用意するか

*盆や清明祭とは、どのような点で異なった祭祀を行うか

 >盆などでは墓所に出向くのに対して、彼岸では仏前で行うことが多い

 >門中に属している場合でも、門中成員が揃うことは少ない

 

3月の行事

三月三日(サングァチサンニチー)

*3月3日に行う年中行事はあったか。あった場合、何という行事か

 >一般に女を中心にした浜下り(はまおり)行事。浜下りとは砂浜に出て、お重に詰めた弁当を共食するなどの民俗行事

 >「女の節供」のような言われ方をする場合がある

*3月3日には誰がどのようなことを行ったか

 >女性が中心の行事。どのような間柄の者同士で連れだったかを聞く

*3月3日にはどのような食事をしたか

 >「貝を食べる」「海で採ったものを食べる」などの決まりがあるケースがある

*3月3日の行事は何のために行われたと伝えられているか

 >アカマタ(蛇)に騙されないため、といった伝説が付帯している場合がある

*3月3日に海神(竜宮神)への祈願や、海難者への供養祈願を行う習慣はあったか

 >あった場合、女の浜下りとは別に、どのようなことを行ったのかを聞く

 >神役組織が関わってくるため、神役経験者にも確認する

 >竜宮神を祀った場所がある(あった)かも確認する。ある場合、この日のほかに竜宮神のための祭祀が行われた日があったのかも調査する。また日程自体、3月3日とは限らないため、そのことも注意する。

 

清明祭(シーミー)

※門中が門中墓で集まって行う門中清明と、村の神役などが古墓などを巡拝する村清明がある。また分家にあたる家では、本家での門中清明の後、更に自分の家の墓で清明を行う場合もある。清明祭の話を聞く時にはどのことを指しているのか、よく注意しながら聞くこと。

 

①村清明

*村全体で行うシーミーはあるか。ある場合、それを地元の言葉で何と呼んでいるか

*村清明ではどこが祭祀対象となっているか

 >古墓や村の草分けのゆかりの場所などが対象となることが多い。地図に落としながら確認していくこと

 >集落の外が聖地となっている場合もある(琉球王家ゆかりの場所など)。注意すること

*村清明は誰が行うか

 >神役組織のほか、草分けの家などが関わることが多い

*村清明はどのような日程で、いつ(時間)、どのようなことを行うか

*古墓など、それぞれの場所でどのような祭祀を行うか

 >供物はどんなものか

 >どのようなことを唱えるか

 >複数の聖地をどのような順番で回るしきたりになっているか

 

②門中清明

*門中でシーミーを行う習慣はあるか。ある場合、それを地元の言葉で何と呼んでいるか

*門中清明を行っているのはどのような家か

 >もし「自分の家でやっている」という門中の宗家がいたら、特に詳しく聞かせてもらうよう頼むこと

*門中清明はどのような日取りで、どのように行うか

*門中清明ではどのような供物を用意し、どのような祭祀を行うか

 >料理、酒、花、米、線香、ウチカビなど

*門中が複数の墓を所有している場合、どの墓をどのような順番で回るか

 

※両者を確認したうえで、重なり合いについても注意すること。特に集落の中心的な門中では、門中清明と村清明が重なり合ってくる面がある。

 

4月の行事

畦払い(アブシバレー)

※一般には害虫防除の儀礼で、事前に田畑の除草を行うほか、畑で取った害虫を芭蕉の葉などでくるんで海に流すなどのことをした。なお儀礼の中で、虫払い(ムシバレー)と物忌みの2つの民俗が区別されている場合があり、物忌みの場合はむしろ畑仕事を禁止し、アシビを行う例もある。

*アブシバレーはいつ行われていたか(日取り)

*アブシバレーではどのようなことをするか

 >虫払いを行う場合、いつ、どのような虫を、何に入れて、どこに流したのかを聞く。特に場所は重要なので地図上に落とすこと

 >物忌みを行っていた場合、どの期間、何が禁忌とされていたのかを聞く

*アブシバレーの際に、どこかにサンを挿す習慣はあったか

 

5月の行事

ユッカヌヒー

※主に5月4日を指し、海に関する祈願などが行われることが多い(ハーリーが有名)。あわせてアシビが行われる例が目立つ。3月3日の行事と対の節供であるので、それと同じことをするかどうかに注意すること。

*5月4日、もしくは5日に行う行事はあったか

 >あった場合、何という行事だったか

*ハーリーの競争を行うか(かつて行っていたか)

 >行っていた場合、どのように分かれて競争していたのかも聞く

 >近隣の村落に見に行く場合もあるので、あわせて確認する

*竜宮神の祭祀は行われていたか

 >行われていた場合、供物のほか、祭式、誰が祀るかなどについても聞く

*5月4日・5日にアシビを行う習慣はあったか

 >あった(ある)場合、どのようなアシビが行われていたか(共食、すもう、など)

 >誰がどのように仕切っていたのかも確認する

*この行事ではどのようなものを食べたか

*菖蒲の葉を挿したり、供えたりする習慣はあったか

*「5月5日には海に出てはいけない」というような言い伝えはあったか。あった場合、なぜいけないと言われていたか

 

五月ウマチー(グングヮチウマチー)

※二月ウマチー同様、神役の経験者でないと分からないおそれが強い。祭祀の中身が分かりそうな話者をよく探すこと。

*5月15日に前後してウマチーを行う習慣があったか

 >あった場合、それを地元の言葉で何と呼んでいたか

*5月のウマチーは何の祈願であったと聞いているか

 >一般には稲の予祝儀礼とされるが、伝承されていない例も多い

*5月のウマチーではどのような祭祀が行われたか

 >「いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのか」を押さえる

 >何が祭祀対象であったか

 >それぞれの祭祀対象にどのような祭祀を行ったか(多数に渡ることが多いので注意)

 >どのような供物が捧げられたか(それぞれの祭祀対象に即して聞く)

*5月のウマチーを行ったのは誰か

 >一般には神役組織。ノロやニーガンなどがどのような祭祀を行ったのかを聞く

 >祭場によって異なる場合もあるので注意

 >ノロにどのような謝礼をしたのかも聞く

*ウマチーの間、「やってはいけない」と言われていたことは何かあるか

 

6月の行事

※6月以降、沖縄は稲の収穫期に入る。これによって大量の藁が得られるため、この時期以降、綱引きが各地で行われ始める。6月ウマチーに綱引きが伴う場合があるほか、。もし綱引きを行っていた場合、それについても聞くこと。

六月ウマチー(ルクグヮチウマチー)

※二月・五月ウマチー同様、神役の経験者でないと分からないおそれが強い。祭祀の中身が分かりそうな話者をよく探すこと。

*6月15日に前後してウマチーを行う習慣があったか

 >あった場合、それを地元の言葉で何と呼んでいたか

*6月のウマチーは何の祈願であったと聞いているか

 >一般には稲の収穫儀礼とされるが、伝承されていない例も多い

*6月のウマチーではどのような祭祀が行われたか

 >「いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのか」を押さえる

 >何が祭祀対象であったか

 >それぞれの祭祀対象にどのような祭祀を行ったか(多数に渡ることが多いので注意)

 >どのような供物が捧げられたか(それぞれの祭祀対象に即して聞く)

*6月のウマチーを行ったのは誰か

 >一般には神役組織。ノロやニーガンなどがどのような祭祀を行ったのかを聞く

 >祭場によって異なる場合もあるので注意

 >ノロにどのような謝礼をしたのかも聞く

*ウマチーの間、「やってはいけない」と言われていたことは何かあるか

 

カシチーウィミ(強飯折目)

*6月24日、25日ごろにおこわを炊く習慣はあるか。ある場合、何という行事か

*おこわは何を入れ、どのように作ったか

 >小豆を入れる、もち米と混ぜる、など

*おこわはどこに供えたか(神棚、仏壇など)

*何のためにこの日におこわを炊くのかについて言い伝えはあるか

 

7月の行事

七夕

*7月7日の七夕ではどのようなことを行うか

>一般的には盆行事の始まりとして、墓の掃除などが行われる。そのほか墓の修理や位牌の作り換えもこの日を選ぶ事例が見られる

 >古い書類や着物などの虫干しは行ったか

 >村芝居の衣装や旗頭の虫干しは行ったか

*洗骨を七夕の日に行うという習慣はあったか

 

迎え盆(ウンケー)

※どのようなものをどこに飾り付けるのかを丁寧に調べること

*盆にやってくる霊のことを地元の言葉で何と言うか

 >精霊(ソーロー)など

*死者の霊はどこから、どのようにやってくると言われているか

*盆の飾りつけは何時ごろから行うか

*盆の飾りつけでは、家のどこにどのようなものを飾るか、またそれらにはどのような意味があるか

*仏壇にはどのようなものを供えるか

*家の門はどのような用意をするか

*死者の霊はどこまで迎えに行くか

 >墓まで行くか、家の門までか、玄関までか

*線香はいつ灯すか

*死者を迎えてから新たに供えるものはあるか

*先祖の霊以外(無縁仏など)のために供えるものはあるか

*迎え盆の日にやってはいけないと言われていることはあるか

*初盆(ある人が死んでから最初に迎えたお盆)の家でだけ特別におこなうことはあるか

*親戚や門中の人間が、盆の間に挨拶に来ることはあるか

 >来るのはどのような間柄の親戚か(分家が本家まで挨拶に来る、など)

 

  1. 盆の中日

*死者の霊には何時ごろ、どのようなものを供えるか

 >朝晩の食事のほか、「おやつ」や「お茶」を出すことはあるか

*死者は盆の間、どこで何をしていると言われているか

*盆の間、仏壇などの祭祀のやり方を普段と変えることはあるか

 

送り盆(ウークイ)

*死者の霊に何時ごろ、どのようなものを供えるか

*送りを行うのは何時ごろからか。その際、どのようなことを行うか

 >アダンの実など、人間には食べられないものを供える習慣はあるか

*このときウチカビは焼くか。またその枚数に決まりはあるか

*死者は何時ごろに出立すると言われているか

*子供のうちに死んだ者の霊は早く送り出す、という習慣があるか

*死者の霊はどこまで見送るか

 

エイサー

*エイサーを行うのは主に誰の役割だったか

 >青年団、保存会など。組織構成についても聞く

*練習は何日前から、どこで始めるか

*衣装や道具はどのように準備・管理しているか

>揃いの衣装などを用いるようになったのがいつごろからであったのかも聞く

*エイサーはどこで踊られるか

 >集落の複数個所をめぐる場合は、地図上におとすこと

*エイサーの曲や踊りで昔と変わった点はあるか

 

8月の行事

トーカチ

*8月8日に88歳の年祝いを行う習慣はあったか

 >あった場合、地元の言葉で何と呼んでいたか

*トーカチにあたる人物にはどのような衣装を着せたか

*トーカチではどのような儀礼を行ったか

 ※近年では多くが単純な祝いの席となっているが、かつては葬式を模した儀礼を行い、その後「生まれ変わった」として祝いを行っていた

*トーカチの席にはどのような関係者を呼んでいたか

*トーカチではどのような儀礼食が食べられたか

 

十五夜・豊年祭

※村落祭祀でも規模が大きいため全貌がつかみにくい。複数の話者から話を聞き、多角的に見ていくこと。大まかには、公民館組織や青年団が行う娯楽に属する行事と、神役組織が行う祭祀行事に分かれるので、まずはその両方の流れをつかむ必要がある。

*8月15日に行う祭祀を地元では何と言うか

 >豊年祭、ジュウグヤアシビなど

*豊年祭ではどのようなことが行われるか

 >村芝居、組踊り、獅子踊り、相撲など多様であるので注意。

 >いつから練習をはじめ、配役などはどのように決めるのかについても聞く

 >道具をどこに保管し、誰が管理しているのか。また不足や故障があった場合、いつ手配してどのように対応しているのかも聞く

*豊年祭の祭祀ではどのような神に対し、どのような祭祀を行うか

 >※神役の経験者に聞くのが望ましい

 >何が祭祀対象となり、いつ、どのような順番で、どのような祭祀を行うのかを確認する。特に複数の聖地を巡拝することが多いので、地図上に落としていくこと

 >他村に在住するノロを招いて祭祀を行う例もある。どこのどのような神役の世話になっているのか注意する

 

柴挿(シバサシ)

*豊年祭の前後の日取りで、シバサシを行う習慣はあるか

*シバサシに挿す植物には何を用いるか

 >ススキ、稲、桑の枝など。できれば作り方も聞く

*シバサシを挿すのは家のどこか

 >家の門や軒先などが多い。ほか便所や牛小屋、水瓶など。また車などにつける場合も多いので確認すること

*一度挿したシバを外すことはあるか

 

妖火日(ヨーカビー)

*8月の豊年祭の前後に、火の玉などが見えやすいと言われている日はあるか

>ある場合、それはいつからいつまでか

 >その日のことを地元の言葉で何と言うか

*火の玉はどのようなものだと考えられていたか

 >妖怪、イニンビ(遺念火=無念を抱えた死者の霊)など

 >火の玉に遭うことは何かの予兆だ、という考えはあったか

 >火の玉に遭ってしまったら、何か対策などはしたか

*火の玉が出たのを見に行く、ということはあったか

*爆竹を鳴らして魔除けをすることはあったか

 

旗スガシー(ハタスガシ)

*旗を立てて集落を練り歩き、邪気祓いや豊作祈願を行う習慣はあったか

 >あった場合、地元の言葉で何と言ったか

*ハタスガシは誰が、どのように行ったか

*地元のハタスガシにはエイサーなど、芸能が伴うものか

*ハタスガシはいつ、何のために始まったと伝えられているか

*用いる旗や衣装はどのように管理されているか

 

 

9月の行事

九月九日(クングヮチクニチ)・菊酒

※健康祈願であるため様々な個人的事情と結びつきやすく、海外移民の健康祈願や、戦中に海外に派兵された兵士たちの安全祈願なども、この日に行われていた例が多く報告されている。伝統的な儀礼だけでなく、話者が実際に行った祈願などについても聞いてみるのが望ましい。

*9月9日前後に健康祈願などの祭祀を行う習慣はあるか

 >家で個別に行う儀礼のほかに、集落で村落祭祀を行っている場合がある。後者は神役の経験者に確認することが望ましい

*この日に菊を入れた酒を供える菊酒(キクジャチ)の祈願を行うか

 >行う場合、菊酒はどのような神に供えたか(火の神、仏壇など)

 >酒に入れる菊の葉に決まりはあったか

*村落祭祀ではどのような神に祭祀が捧げられたか

 >ビジュルや井泉であることがある

 

種子取り(タントゥイ)

※旧暦で行う例が多く、9月~10月頃で一定しないため注意

*種もみを地域全体で一律に水に浸す「タントゥイ」の行事はあったか

 >あった場合、地元では何と呼んでいたか

*タントゥイの日程はどのように決まっていたか

*タントゥイの日には祭祀や、神への供物などは行われていたか

*タントゥイはどこで行われたか

 >苗代田(ナーシルダー)であった場合それはどこにあったか。またいつなくなったか

*タントゥイに加わらない家はあったか

 

第10節 10月の行事

火神御願(ヒヌカンウグヮン)

※10月に行われるとは限らないため注意すること

 

カママーイ

 

第11節 11月の行事

冬至(トゥンジー)

*冬至のことを地元の言葉で何と言うか

*冬至の日に食べるものは何かあるか

 >一般にはジューシーなどが多い

*冬至の日には家の神々に何か祭祀や供物を行うか

 >行う場合、具体的に確認する

 

第12節 12月の行事

鬼餅(ムーチー)

*12月8日にやるべきことや、やってはいけないと言われていたことはあったか

*12月8日に餅(ムーチー)を作る習慣はあったか。あった場合、何という名前の行事だったか

*どのようなムーチーを作ったか

 >入れるもの・材料。何の葉でくるんだか

 >ムーチーの名を地元の言葉で何と言ったか

*食べる前に神棚に供える、軒先に吊るす、などの習慣はあったか

*ムーチーはどのような祈願のために作るものだといわれていたか

 >無病息災、男の子の健康祈願など

 

すす払い(大掃除)

*1年の終わりのすす払い(大掃除)は何日に行っていたか

 >行ってはいけない日はあったか

*掃除の道具にはどのようなものを使ったか

 >ほうき、ぞうきんなど。今は市販品だが、昔は竹などを束ねて加工していた例があるため、具体的に聞くこと。

*カマドの掃除はどのように行ったか

 >ひびの修理や土の塗り直しを行ったかも聞く

*普段は掃除しないが、すす払いの日には掃除することになっていた場所はあるか

 >屋根裏、床下など。床下の土の入れ替えは行ったか、入れ替えていた場合その土をどうしていたかも聞く

*庭などに海辺の砂を運んで撒くような習慣はあったか

*すす払いの仕事はどのように分担したか

*家族以外の者や、専門家に頼んで掃除してもらうような例はあったか

*掃除の後、家の各所に供え物などをする習慣はあったか。していた場合どこにしていたか

>屋敷の四隅、門、火の神、仏壇、神棚、便所など

 >何をいくつずつ供えていたのかも聞く。またいつ片づけたのかも確認する

*年末に、「ネズミのための食事」を供える習慣はあったか。あった場合どのような名前の行事で、どのようなことをしたか

 

御願解き(ウグヮンブトゥチ)

*一年の終わりに御願解きは行うか。行う場合は何日か

*御願解きは世帯単位か、集落でまとまって行うか

 >世帯単位の場合、どこにあるどの神に対して行うか

  >火の神(ヒヌカン、ウカマガナシ、など)

 >集落でまとまって行う場合、どこにある神に誰が行っておこなったか

*「火の神が天に上る日」のような言い伝えはあったか

*御願解きではどのようなことを行うか

*どのようなものが捧げ物に用意されるか。

 >線香、白米、酒、食物、菓子など

>食物であった場合、お下がり(ウサンデー)は誰が食べる決まりであったか

*御願解きを行わなかったり、特別なやり方でやる場合はあったか

 >身内に不幸があった、など

*年の瀬に墓参りをしたり、墓掃除をする習慣はあったか

 >あった場合、日取りはいつで、どのようなことを行ったか

 >年末に「墓に行ってはいけない日」はあったか

 

正月料理

*正月料理の支度は何日ごろから始めたか。また避けるべき日はあったか

*正月料理にはどのような食べ物を用意したか(豚に関しては別項)

 >料理名と材料を確認する

 >料理についてのいわれ(なぜそれを食べるのかという伝承)がある場合は聞く

*モチをつく習慣はあったか

*正月に芋(里芋、田芋)を食べる習慣はあったか

*正月に大根・ニンジンを食べる習慣はあったか

*正月にタコを食べる習慣はあったか

*正月に昆布を食べる習慣はあったか

*正月に食べてはいけないと言われていた食べ物はあったか

 

豚の畜殺

*正月用の豚の畜殺はいつごろまで行われていたか

*行事の名前はあったか(ウヮークルシーなど)

*正月の豚の畜殺は年末の何日ごろに行う習慣であったか。またその日を地元の言葉で何と呼んでいたか

*豚の畜殺はどこで行ったか

 >屠豚場があったか。あった場合、地元で何と言っていたかも聞く

 >海辺、川のそば、ため池のそばなど。地元での呼称も聞く

*豚の畜殺にあたって注意することはあったか

 >絶食させる、他の豚と別にする、など

*豚の畜殺は誰の役割であったか

*豚はどのように殺していたか(道具、下に敷くもの、切り込む箇所、縛るかどうかなど)

*畜殺された豚はどのように配分されたか

 >近隣の手助けがあった場合、手伝いの人々にはどう配分したか

*豚を畜殺した日に作る特別な料理はあったか

 >「チイリチー」など。豚肉だけか、食材として何か加えたのかも確認する

*畜殺した豚肉を神様などに供える習慣はあったか

*残った豚の骨はどう処理したか

 >豚舎などに吊るして魔除けにするような習慣があったかも確認する

 

大晦日・歳の夜(トゥシヌユールー)

*正月飾り(松飾りや門松など)はいつ用意したか

*松飾りや門松はどのようなものを作ったか

 >材料(どこでとってきたかも)、大きさ、作り方についても聞く

 >いわれ(なぜそれを飾るのかの伝承)がある場合、それも聞く

*正月飾りの数は幾つで、家のどこに飾ったか

*農具や大工道具などに飾りなど(米、ミカンなど)を供える習慣はあったか

*大晦日の日にやってはいけないことは何かあったか。あった場合、なぜいけないのか聞いたことはあるか

 >海や山で仕事をする、など

*大晦日の日に家で行う儀礼はあったか

 >あった場合、儀礼の名前と行うこと、供物などについて確認する

*大晦日の夕食を神様に供える習慣はあったか

*にんにくの葉(ヒルヌファー)や実を大晦日の夜のまじないに使う習慣はあったか

 >便所に行くときはにんにくを持っていく、など

*数え年で数えていた時代には、どの時点で年を取ったことになったか

 >日付が変わった時点、大晦日の夕食を食べた時、など

*翌年の運勢を占う習俗はあったか

 >農具に夕飯を供えておき、翌朝ネズミが食べた量を見る、など

*年越しそばを食べる習慣はいつから始まったか

 

第13節 年中行事全般

 

*年中行事のことを地元の言葉で何と呼んでいるか

 >オンメ、ウンミ、など

*行事の中で今でも旧暦で行っているのはどれか、またそのことに理由はあるか

*行事の中で新暦に変えたものはどれか。またその理由はなぜか