第2章 くらし 衣食住

 

※衣食住は「あたりまえ」すぎることなので、普段は意識されにくいため、項目的に聞いていくと情報が得にくいことがある。話者の人生に即して、たとえば「おじさんの結婚式のときは何を着ましたか?」といったように、実際の事例を個別的に集めていく方がやりやすい

※戦中・戦後しばらくは衣食住に特に苦労が多かった時期であるので、その時期のことは記憶されていることが多い。ただ、それだけではなく社会が安定し始めた時期以降についても丁寧に確認していくこと

 

衣類

 

1)服の素材

*衣類にはどのような素材が用いられたか

>繊維(綿、芭蕉布(バシャギン)、麻、絹、毛糸、フェルト、化学繊維など。大まかな時代の変化を押さえる)

>ボタンなどの素材。(プラスチックのほか、金属や木材、貝など)

*服の素材はどのように手に入れていたか

>自給(それぞれ何をどこから?)

>購入(服はどのように買っていた。また布から仕立てていたなら布はどこで買えたか)

*再利用はどのように行っていたか

*どのような仕立て直しを行っていたか

>古くなった服を布に分解して子供服を仕立て直す、など

>特に戦中戦後の物資難の時代、軍用品を衣類に仕立てているケースに注意

*「おさがり」はどんなものが「おさがり」になり、誰が誰にゆずるものだったか

 

2)加工

*織機は使っていたか。使っていた場合、何を織っていたか

>布の製造工程が分かれば教えてもらう

*芭蕉布や麻布の製造はこの地域ではいつごろまで行われていたか

*織った布の染色はどのように行っていたか(自宅か業者か。自宅ならば工程を聞く)

*染色は何を使い、どのような色や模様に染めていたか

 >衣類にまで仕立てていた場合はどのような色・模様が好まれたかも聞く

*ミシンはどのようなものを使っていたか(足踏み式、電動ほか)

*織機やミシンは自宅のどこに置いていたか

*布の加工(織る、縫うなど)はどこで誰から習ったか(親、先輩、学校など)

 

3)普段の被服(晴れ着は別項で)

*普段はどのようなものを着ていたか(男女それぞれ聞く)

>上半身に着るもの(種類と名称を聞く。また用途、着る時期、特徴などを聞く)

>下半身に着るもの(種類と名称を聞く。また用途、着る時期、特徴などを聞く)

*上着にはどのようなものを着ていたか(特に冬場)

*下着はどのようなものを着ていたか

>年齢による違いも聞く

>女性の下着についても(失礼のないように)聞く

*普段の「おしゃれ」としてどんな工夫をしていたか

*子供服にはどのようなものを手に入れていたか

 >入手が難しかったものの一つ。おさがりや仕立て直しが多かったことが考えられるため確認すること

*学校の「体操服」は、もともとどのようなものを着ていたか

*仕事の時はどのようなものを着ていたか(どのような仕事かを踏まえる)

>私生活と仕事での被服に違いはあるか(靴下、ネクタイなどの有無。素材の違いなど)

>農業などの作業時にはどんなものを着ていたか

>海や山での作業着としてはどのようなものを用いていたか

*履物はどのようなものを履いていたか

>靴、下駄、草履、はだしなど。年齢と時期の違いに注意

>下駄などは「持ち主が固定されていたか」も合わせて確認する

>足袋を使っていたか(和服に合わせるほか、職人は地下足袋を靴代わりにしていたか)

*雨具としてはどのようなものを着ていたか(特に台風時)

>着ていなかったか。カッパのようなものを用いたかなど

>一人一人が自分の傘を持つようになったのはいつであるのか、なども確認

*学生服は着ていたか(どこの学校の制服で、どんな形態のものを着ていたか)。

 

4)晴れ着(普段着は別項で)

*晴れ着(お祝い事や葬儀など、特殊な日に着る服)を地元の言葉で何と言うか

*晴れ着にはどのような種類があったか(祝い用、不幸用など)

*どのような晴れ着を着ていたか(男女、年齢を踏まえる)

>スーツ、和服、呉服など。また子供の場合、学生服を晴れ着にしていたか

>葬儀で着る喪服はどのようなものであったか

*年祝いなどの時にはどのような晴れ着を着るか

 >特に高齢者のための年祝いの場合

*集落の祭祀の時にはどのような晴れ着を着たか

 >女性神役の衣装、および男性神役が務める場合にはどのような服装だったか

*女性神役の衣装について分かる人はいるか

>いる場合は信仰に関して立項しているためそれに基づいて調べること

*晴れ着はどこで仕立て、どのように管理していたか

*晴れ着を借りてくる習慣(親族・知人・業者などから)はあったか

 

5)装身具

*カタカシラ(江戸時代の髪型)はいつごろまで結っていたと聞いているか

 >祖父などが結っていたという話を聞いたことがあれば教えてもらう

*頭に何かを被る習慣はあったか(帽子、手ぬぐい、笠など)

*帽子は男女でそれぞれどんなものをかぶったか

*手ぬぐいを巻く場合は、どのような大きさの布をどのように巻いたか

 >可能であれば実演してもらい、写真に収めること

 >男女差が考えられるので、確認すること

*笠などを使っていた場合、素材や形態はどんなものか(できれば図説してもらう)

*メガネはどのようなもの(形態・素材)を、どこで買ってきていたか。

>値段はだいたい幾らくらいだったか(当時の物価を踏まえ)

*化粧品は時代によってどのようなものを使っていたか

*どのような化粧を、どのようなときにしていたか

*女性の髪はどのくらいの長さまで伸ばしており、どのように留めていたか

 >図や写真が得られれば望ましい

*美容室(床屋)はいつごろから地元にあったか

*結婚指輪の習慣はいつごろから地元に定着したか

*携帯する時計(腕時計、懐中時計)はいつから使っていたか

>一般的普及は手巻き式の時代と想定される

>日本メーカーかアメリカ、もしくはスイスのメーカーかが分かれば

>どのような仕事の人間が使っていたか

 >壊れた場合にはどうしていたか

*ランドセル(子供のランドセルはいつから普及するようになったか)

>普及の前にはどのような学生かばんが使われていたか

*冬場の防寒具として使ったものには何があるか

 >手袋、マフラーなどを使ったか。またカイロなどを用いたか

*日差し除け、暑さ対策などの工夫のために身に付けたものはあるか

 

6)洗濯、管理と防虫

*服の洗濯はどのように行っていたか

>どこでどのように洗っていたか

>洗剤や道具(洗濯板、たわしなど)は何を使っていたか

*服はどこに、どのように干していたか

 >物干し台などはいつごろから使っていたか

*服は家のどこで管理していたか

>箪笥、柳行李、蔵など。箪笥が置かれていた部屋もあわせて確認する

*衣替えのように季節によって服を替えていたか。行っていたならば季節はいつか

*しばらく着ない服はどのように保管したか

*服にはどのような虫がついたか

>その虫を地元の言葉で何と言うか

>どんな害(服に穴をあける、人を刺す、など)をする虫だったか

*服の防虫・防カビ対策にどのようなことを行ったか

>熱湯による煮沸。煙の燻蒸。薬剤の使用など(道具や工程も具体的に)

 

第2節 食事

 

1)地元で食べていたもの

※漠然としているので栄養源別に確認していくとよい

※ノートか一枚の紙を広げて、書き込みながら話者と一緒に確認していくとよい

  1. 炭水化物(米、イモ、麺類、パンなど)
  2. タンパク質(肉(何の動物・鳥か)、魚(どんな魚か)、豆(豆腐なども含む)、卵など)
  3. 油脂(菜種油、ラード、バターなど)
  4. 無機質(カルシウムほか)(乳(何の動物か)、小魚、海藻など)
  5. 緑黄色野菜(野菜(どんな野菜か)、果物(どんな果物か)など)
  6. 食物繊維(根菜、瓜など)

>全体像が見えたら、次に時代別に「いつまで食べていたか」「いつから食べるようになったか」を押さえていくこと

>普段の食事の他、菓子類や缶詰食品などにも目配りすること

 

2)食事のとり方

*朝昼晩、それぞれどのくらいの時間帯に食事をしていたか

 >特に漁師などの仕事では時間が一般とは異なってくるため注意する

*おやつや間食の習慣はあったか

 >あった場合どんなものをどのくらい食べていたか(菓子の他くだもの、黒糖なども)

*朝食はどのような構成でどのくらい食べていたか

 >大人一人分を基準に、構成(たとえば米+汁物+おかず一品)のように。以下同様

*昼食はどのような構成でどのくらい食べていたか

*夕食はどのような構成でどのくらい食べていたか

*大人はどのくらい飲酒をしていたか

 >いつごろの時間帯に、どんなもの(泡盛、ビールなど)をどのくらい飲んでいたか

 >食事と飲酒は区別されていたか

*家族の中で一人一人の茶碗は決まっていたか

*家族の中で、それぞれの使う箸は決まっていたか

*食事は膳で出されたか。それとも昔から食卓であったか

*食事は家族全員で一斉にとったか。それともばらけることが多かったか

*食器はどこで、誰が、どのように洗ったか

 

3)主食

*主食として米を食べるようになったのはいつからか

 >どのような品種をどのくらい食べていたか

*イモ(サツマイモ)はいつごろまで、どのくらい食べていたか

 >イモは蒸かすほかにどのような食べ方があったか

*麺類はどんなものを食べていたか

 >そうめん、うどん、そばなど

*パンを日常的に食べるようになったのはいつからか

 

4)普段のおかず

*日常的にはどのようなものを主菜(中心のおかず)として食べたか

>肉、魚、豆腐など

*どのようなものを副菜として食べたか

 >汁物、漬物、酢の物など

*おかずは季節によってどのような違いが出たか

*どんなものが「ごちそう」だったか(ただし晴れの日に特別に食べるものを除く)

 

5)調味料

*どんな調味料を使っていたか

 >砂糖、塩、酢、しょうゆ、味噌、みりん、酒、からし、油、など

>一般的ではない特殊な調味料があれば製法・入手法を含めて記録する

>ウスターソースやケチャップ、マヨネーズの入ってきた時期も聞く

*調味料はそれぞれどのように入手していたか

*調味料で自家製するものはあったか(砂糖、塩、味噌など)

*自家製味噌は何から作っていたか

*ダシはとっていたか

 >取っていた場合、何のだしを使ったか(昆布、カツオブシ、小魚、キノコ、など)

 

6)調理法と調理器具

※個々の家庭でも個性が出るため、全て網羅しようとすると膨大な手間を必要とする。代表的な料理に質問を絞り込むとともに、特に地元の食材を用いている料理を優先する

※「漬ける」「干す」「いぶす」料理には、しばしば保存を前提とした、地元の知恵が反映されている。丁寧に見ていくこと。

*「生で食べる」地元料理にはどんなものがあるか

 >野菜の他、魚や一部の種類の肉など

 >どのように味付けして食べるかも合わせて聞く

*「煮る」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい煮るか

 >煮てすぐ食べるだけではなく、保存用に「佃煮」を作ることはあるか

*「焼く」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい焼くか

 >網、七輪など、呼称も含めて確認

*「揚げる」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい煮るか

*「蒸す」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい蒸すか

 >蒸し器など、呼称も含めて確認

*「漬ける」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい漬けるか

 >主に漬物類(野菜の他スクガラスなど)を想定。保管場所もあわせて確認する

 >発酵の工程を含む調理をあわせて確認する

*「干す」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらい干すか

 >主に干物類を想定。魚やイカなど

*「いぶす」地元料理にはどんなものがあるか

 >何をどう味付けし、どのような器具でどのくらいいぶすか

 >燻製料理を想定(あれば)。用いるチップの木種や燻製の仕方を確認する

*一般家庭の調理器具にはどんなものがあり、それぞれ地元の言葉で何と呼んでいたか

*鍋や釜に穴が開いた場合、どうしていたか

 

7)貯蔵と保存

*家の中で食品を貯蔵していたのはどこか

 >床下、屋根裏、高倉などのほか、場合によっては近隣のガマなど

 >食品によっても貯蔵先が違うので、穀類、野菜類、肉・魚など、調味料にわけて聞く

*食品はどのような器で貯蔵したか

 >壺、カメ、瓶などの種類と用途を確認する

*食品はどの程度貯蔵ができるものと考えられていたか

*保存のための工夫として行っていたことがあるか

 >「調理法」の項目とも関連

*食品にはどのような害虫がつき、そのためにどのような対策をしていたか

*食品をかじるネズミなどをさけるため、どのような工夫をしていたか

*地域に冷蔵庫が普及したのはいつか

 >電気式の前に氷冷式があるので注意すること

*缶詰や瓶詰など、長期に保存がきく食品を使うようになったのはいつごろからか

 

8)水の確保

*水道が普及する以前、水はどこから汲んできていたか

 >記憶している人がいれば。あわせて水の汲み方と貯め方についても確認する

*家に井戸がある世帯はどのくらいあったか

*井戸にはどんな名前があったか

*地元ではどのように井戸を掘っていたか

 >分かる人がいればどのような人が何人くらい集まって、どのような工程で掘ったか

*天水(雨水)はどのように利用していたか

*この地域では生水はそのまま飲んでも問題なかったか

 >沸かさねばならなかった場合はその理由も記録する

*簡易水道はいつごろ普及し、家のどこにひいたか

*降水量が減り、渇水に見舞われた場合、どのように対応したか

 >具体的な水不足の年の例を思い出してもらい、対応を聞き取りする

 

9)燃料

*地域にガスが引かれたのはいつごろで、集落全体に行き渡ったのは何年ごろか

*ガスが引かれる以前に燃料として使われていたのはどのようなものか

 >恐らくは薪だが、それ以外に燃料がなかったか確認

*薪はどこから、誰がいつ取ってきていたか

 >しばしば子供の役割だったが、ここでもそうだったか確認

 >なお別な地域には妊娠中の女性に薪を集めさせる民俗もある。聞いてみること

 >薪を取ってきて良い山の範囲も確認する

*炭を燃料にすることはあったか

*薪は家のどこに保管していたか

*どのような木材が薪にふさわしいと考えられていたか

*薪に火をつけるときにはどのようにしたか

 >点け木の使い方、火吹き竹を使ったか、マッチやランプ、種火の利用など

 

10)食糧難

*この地域では過去にどのような食糧難があったか

 >主に戦中戦後の経験を聞く

*食べるものがない時、何か「普段は食べないようなもの」を工夫して食べていたか

 >ソテツ、野草、つる植物、根など

*救荒食の加工の仕方について

 >ソテツがゆなど、話者が作り方を記憶しているものを聞き取る

*食べるものがない時、どういうつてを頼って食べ物を手に入れたか

 >親戚づきあい、近隣の協力、行政の支援など

*米軍統治下で軍からの放出品などは口にしたか

 

11)食文化の変化

*(話者の印象として)話者の幼少期から現在に至るまで食文化はどのように変わったか

 >時代を区切りながら、変化のポイントを聞いてみる

*時代が変わって手に入りやすくなった食品にはどのようなものがあるか

 >たとえばリンゴなどはかつて沖縄では手に入りにくかった

 

3.住居

※住居項目を調査する際には方眼紙を持参し、適宜図面を書きながら聞き取りを行うこと。話者に描いてもらっても構わない。ただ、後から図面を見返すと調査者本人でも混乱することが多いので、ノートの整理は記憶が鮮明なうちに優先して行うこと。

※屋敷地の図面では、すべての建物がそろった「典型例」を取る必要はない。建物の組み合わせの実態を重視すること。

 

1)屋敷地

*敷地の中にどのように家屋を配置したか

 >方位や村道との位置関係にも注意する

*それぞれの建物を何と呼んでいたか

*それぞれの建物はどのように使い分けられていたか

*家畜小屋は敷地のどこに置かれていたか

 >豚小屋(フールヤー)はどこか

 >牛小屋・馬小屋・ヤギ小屋はどこか

>鶏は放し飼いである場合も多い。卵をどのように採っていたか聞くこと

*便所はどこにあったか(汲み取り式などの場合)

*自宅の風呂はいつごろから普及し、どこに置かれたか

 >風呂釜はどのような仕組みになっていたのか、薪か油、ガスであったかなども聞く

*敷地の庭などで何か植物を育てていたか

 >野菜のほか、藍、ウコンのような換金作物。芭蕉や綿のような繊維など

*屋敷地の境界はどのように仕切っていたか。また垣の管理はどのようにしていたか

>石垣・生垣・柴垣が考えられる。高さなども確認する

>石垣の場合、崩れた場合の修理はどこから石を持ってきて、誰がどのように直していたか

>生垣・柴垣ではどのような植物(フクギなど)を植え、どのように管理していたか

*この地域には「ヒンプン」はあったか

 >あった場合形状や材質を確認する。またどのような家にあったのかも調べる

*庭のどこかに神様を祭ることはあったか

 >もともとあったものも含む

 >あった場合、場所・屋敷との位置関係のほか、向いていた方位なども確認する

 

2)茅葺き穴屋(アナヤー)

※地面に穴を掘ってそこに柱を立てる形態の屋敷

※まずは話者の記憶にある典型的な穴屋について聞く。またもしまだ残っているor 使っている穴屋があるようなら所在を教えてもらう

*建物全体の広さはどのくらいか(坪数、メートル、尺寸法など単位を明確に)

*間取りはどのようになっているか

 >カマドはどこにあったか

 >睡眠はどこでとったか

 >さまざまな作業を行うのはどの部屋であったか

*各部屋の広さはどのくらいで、どのような名称で呼んでいたか

*広さや間取りの決め方にルールはあったか

*床の高さはどのくらいか

*天井の高さはどのくらいか。またその高さはどのように決めていたか

 >天井裏(天井グヮー)には入ることが出来たか

 >天井裏は倉庫など、何らかの用途に使っていたか

*土間には何か敷いていたか(稲わら、むしろなど)

 

3)貫屋(ヌキヤー)

*建物全体の広さはどのくらいか(坪数、メートル、尺寸法など単位を明確に)

*間取りはどのようになっているか

 >カマドはどこにあったか

 >睡眠はどこでとったか

 >さまざまな作業を行うのはどの部屋であったか

*各部屋の広さはどのくらいで、どのような名称で呼んでいたか

*広さや間取りの決め方にルールはあったか

*床の高さはどのくらいか

*天井の高さはどのくらいか。またその高さはどのように決めていたか

 >天井裏(天井グヮー)には入ることが出来たか

 >天井裏は倉庫など、何らかの用途に使っていたか

*土間には何か敷いていたか

 

4)住まい方

*何人くらいが一軒の家で暮らしていたか

 >世帯数では何世帯が同居していたか

*手狭になった場合、増築することはあったか

 >増築する場合、どのように元の家宅からつなげたか

*どの部屋をどのように使ったか

 >どこで寝たか。食事はどこでとったか。作業はどこで行ったか

 >来客はどこに通したか

*家人は主に家のどこから出入りしたか

*来客は家のどこに立ち寄ったか

 >玄関からくるほか、縁側に立ち寄るなどの例も調べる

*玄関の鍵はいつごろから普及するようになったか

*二階建ての家屋はいつごろから普及するようになったか

*家の掃除にはどのような道具を使っていたか

 >ほうき、ちりとり、はたき、ぞうきんなど。部屋による掃除の仕方の違いなども

 >道具の地元の呼称も聞く

 

5)家具(できれば図面上に記録していくこと)

*どのような家具が使われていたか

 >箪笥、卓、棚、鏡台など

 >大きさのほか、高さなども確認する

*それぞれの家具はどの部屋に、どのように置かれていたか

*家具はそれぞれ、先祖から引き継いだものであったか、それとも後から買ったものか

>戦争で失われている例が多いため考えあわせること

>嫁入り道具として持ち込まれたものもあるので合わせて聞く

*家具はどのような材を使ったもので、どこから入手していたか

 >職人は誰で、どの程度の資産価値があったか

 >嫁入り道具であった場合、離婚したらどうなったのかも調べる

*屏風などで部屋を仕切ることはあったか

*写真や賞状などはどこに飾っていたか

 

6)建築材料

*建材に用いた木材は主に何であったか

 >地元の言葉でかまわない

*木材は家の箇所によってどのように使い分けられていたか

 >分かればつかいわけられる理由も

*木材のほか、家を建てるにはどのような材を集めていたか

 >石、カヤ、稲わら、瓦、など

 >どこで入手してきていたのかも確認する(購入、地元の山、など)

*建築材料にふさわしい材であるかは、何をポイントに判断していたか

 >木の木目、よく乾いているか、石であればひびわれがないか、など

*木材の上下や加工の仕方は気にしたか

 >特に風雨や日光にさらされる部材はどのような加工を施したか

*加工にはどのような工具が使われていたか

 >専門の大工が作っていたのであれば分からなくても構わない

 >ユイマールなどで作っていたのなら、農具(鎌、なた、のこぎりなど)との兼用が考えられる

 >工具は地元の言葉で聞き、分からないものは図を書いてもらうこと

*建材は誰がどのように加工したか

 >大工か地元のユイマールか

 >分業の仕方なども聞いてみる

 

7)建具と採光

*部屋の仕切りには何を使っていたか

>板戸、ふすま、障子など。地元の言葉で何と呼んでいたのかも聞く

*窓はどのように加工していたか

 >窓ガラスはいつごろから使うようになったか

 >ガラスの普及以前は、窓はどのように開閉していたか

*鍵や「かんぬき」などで閉じる部屋や倉などはあったか

 >あった場合、理由も聞く

*「すだれ」や「のれん」を使うことはあったか

 >あった場合どのようなときに、どのように使っていたかも聞く

*カーテンが普及するようになったのはいつごろか

 >戦争中の灯火管制との関わりを聞く。また地元の言葉で何と呼んでいたのかも聞く。

*ランプはどんなものをいくつくらい使っていたか

 >どの部屋で使い、どのようにして天井などから下げていたのかも聞く

 >どのくらいの暗さで灯しはじめ、何時ころに消していたのかも聞く

*「蚊帳」はいくつくらいあり、どのように使っていたか

 >大きさとつりさげ方、どの部屋で使っていたのかなども聞く

 

8)建築儀礼

*家を建てる際に宗教者などに判断をあおぐことはあったか

 >家相、風水(フンシ)など。また日取り(暦)の良し悪しなども

 >あおぐ場合、どのようなタイミングでどのようなことを聞き、どの程度気にしたか

*家を建てる前に、更地に儀礼をすることがあったか

 >その儀礼はどのような神にあてたものか(祖霊、土地神などわかれば)

 >どのような儀礼を行ったか(米や酒などの供物を用いたか)

*家の棟上げの際、棟木に文字を書いた札を下げたり、直接書く習慣はあったか

 >その文字はどのようなものか(一般に「紫微鑾駕」「シベランカ」など)

 >その文字を書くのは誰であったか

*家が完成した際に行う儀礼はあったか

 >誰が行うのか、作法なども含めて具体的に

*新居に引っ越す際に行う儀礼はあったか

 >主には先祖の位牌やヒヌカンの移動などが想定される

*家を取り壊す際に何か儀礼を行ったか

 >土地の神を移す。香炉を動かす儀礼を行うなど。新居への転居の際の儀礼とセットで

 

9)祭祀装置

*仏壇は家のどこにあったか

*分家を新築した場合、仏壇は最初から設けたか

*仏壇はどのような大きさ、形態、材質であったか

*床の間はあったか。あった場合、そこに何か祀ることはしていたか

 >掛け軸などのほか、正月などに限って祀られたものなどがないかにも注意

*葬儀を自宅で行う場合、家の間取りをどのように利用したか

 >どこに祭壇を作り、どこに来客を入れ、どこで通夜を行ったか

 >棺をどこから出したのかも聞く

*盆棚は敷地のどこに設えたか

*火の神(ヒヌカン)は家のどこに祀っていたか

 >祀っていた場合、どのような形態であったのかも確認する

 >台所以外に祀っている場合があったかも聞く

*便所の神は祀っていたか

 >子供の誕生儀礼などで、便所に詣でる習慣があったかどうかも確認する

*家のどこかに札や符(フーフダ)などを貼ることがあったか

 >何をどこに貼り、いつ張り替えをしたのかも聞く

 >札をどこで入手していたのかも聞く

*シバサシやサンは家のどこに、どのように差したか

*胞衣や歯などを埋める場所はどこかに決まっていたか

 

10)住まいの変遷

*この地域の家々はいつごろ、どのように変化してきたか

 >漠然とした流れを捉えた上で、具体的な特定の家に即して聞いてみる

 >建材の変化(木から鉄筋コンクリートへ、など)

>間取りの変化(部屋の構成の変化、二階建て、屋内にトイレ、など)

 >建具の変化(窓ガラス、セメント瓦・赤瓦、網戸なども)

 >設備の変化(電気とコンセント、換気扇、給水タンク、洋式便座など)

*家族の変化(昔はたくさんいたが今は一家族になった、など)とどう関わっているか

*家電製品は何がいつ入ってきて、どこに置かれたか

 >電話はどこに置かれていたか

 >ラジオはどこに置かれていたか

 >テレビはいつ入ってきて、どこに置かれたか(白黒とカラーの時期別も)

 >冷蔵庫はいつ入り、何を冷やしていたか(保存より「おいしさ」が大事という傾向)

 >扇風機はいつ入り、どこで使っていたか

>クーラーはいつ入り、どこに取り付けられていたか

 >洗濯機はいつ入り、どこに取り付けられたか(間取りの変化を生じたか)

*駐車場を家の敷地にもうけるようになったのはいつごろからか

 

4.民間療法